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 管理人:鍵取りょうすい 様より頂き物

折角、学校が休み、バイトも休みなのにな……

「最後の5分」

 こんな日、来なけりゃ良かったと少し鬱になる。腕時計の時計は11時45分を指している。今日は2月22日、俺の誕生日、親も仕事が忙しくて祝ってもらえず、妹にも忘れられた。最後の希望――俺の彼女からの連絡も一行に来ない。つまるところ1人淋しく誕生日を迎えている。学校休みの名目は試験休み、祝ってもらいたいのに祝ってもらえなくて試験から開放されて休むことが嬉しいのか嬉しくないのかが分からない。
 いろいろな思考を巡らせていると時計は11時47分を指している。今日と言う日もあと13分で終わる。ニュースでは政治家が逮捕されて話題になっていた。スポーツで日本人選手が活躍していた。そんな事があった日ももうすぐ終わる。今日と言う日が何も無いまま、終わろうとしている。
 携帯に目をやった。あと12分、勉強机を見た。あと11分、目を閉じ耳を澄ませた。あと10分、深く息を吸った。あと9分、ベッドに横になった。あと8分、腕時計に目をやった。あと7分、本当にこんな日が来なければ良かったと思う。あと6分、
 もうすぐ5分になろうと言う時ふと携帯が鳴った。彼女からだった。
『窓から外を見て、見たら外に出て』
 なんともぶっきらぼうなメールだった。窓の外を見る。誰か人が立っている。女の子、見覚えのある姿、それは正しく俺の彼女の姿だった。書かれたとおりコートを羽織り外に出る。手提げ袋を持った俺の彼女がいた。
「ごめんね。遅くなったけど、誕生日おめでとう。」
 我ながら情けない。涙が出てきそうになる。
「うん、ありがとう」
「どういたしまして」
 素直にありがとうと言えた。
「これ、プレゼント、今日バイト終わってから間に合うように必至に編んでいたんだ」
 紙袋を渡される。
「ありがとう、開けてもいい?」
「うん、いいよ」
 自分がプレゼントを貰った子供のように思えた。袋を開けると出てきたのは薄手のセーター、春でも着れそうな物だ。
「セーターだ」
「うん、細い毛糸で作ったからまだ着れるよ。それに私のとお揃いなんだ」
「そうなんだ。じゃあ一緒に着て遊びに行こう。」
「うん」
 デートの約束をした。腕時計が音を鳴らす。0時になる合図だった。
「よかった、間に合ってたんだ。間に合わないと思ってた」
「でも間に合ってる。ありがとう」
 昨日と言う日の最後の5分だけは後悔しないで済みそうだ。

ヒトコト
りょうすいさんより誕生日小説。
凄ぇ...
何気ない一瞬の描写とかそういうの...
わざわざ書いて頂いて、しかも2月22日でw
りょうすいさんありがとうございます!

モドル