唐突でスマナイが、然し出来れば真剣に考えて貰いたい。
この世界は人間に対して何らかの影響を与える現象機構その他が多すぎる気がしてならない、というのが最近の私の考えなのだが、然しそう言い切ってしまうのも些か早計であるような思いもある。現象云々以前の問題として矢張り人間という生物其の絶対数が多いという事が少なからず関わっているであろう事は明々白々ではあるが、兎にも角にも世の現象について一つ考えて欲しい。
例えばそう、朝の光などはどうであろうか。
脳を白く冒し、強制に覚醒させる作用を平生は及ぼすモノだ、其れが平常の動きであり、世界の法則の一つである。其の様に決まっている。
世界に創り上げられた機構とは斯様に素晴らしいモノではある……だが、それがもし世界に反旗を翻したとしたら、どうなるであろうか。
夢中ヨリ引き戻す光は只白く、強制な覚醒など望めない。何も無い。只、底に在る丈。
そんな世界は不幸か。
そんな世界は不要か。
私は遙かを想う。
例えばそう。
只夢を視る。
揺蕩う夢を。
◆ ◆
其処は揺れていた。
天も無く、床も無く。
景色も無く、海の中。
灰の海で私は揺れていた。
手も、足も、実のところ体も無いと云うのに、其れでも私は揺れていた。
液体の中に眼球。
二つ浮かんだ其れが、只何も無く揺れる幻想。
灰が揺れる。
灰が揺れる。
此処は地獄か。或いは桃源か。
たった一人で、私は浮いていた。
恐らく此れは始まりで。
思うに其れは終わりなのだろう。
悪い幻想≪ユメ≫。
覚めれば消える只の泡。
そう。
朝になればまた。
色の無い現実に戻れるのだろう。
まるで、此の世界と同じ様な。
◆ ◆
只夢を視る。
揺蕩う幻想。
◆ ◆
この日はそう、夢と消えたのだ。